目次
結論から言うと
「会社に尽くす」という古い働き方を捨て、株式を通してお金に働いてもらう仕組みを作りなさい。資産運用は『全世界株式のインデックスファンド』一本で十分。あとは他人と比べず、自分の機嫌を取って、自由に生きなさい。これが、経済評論家・山崎元さんが息子へ、そして私たちへ遺した最後のメッセージです。
1 この本を読むと得られること
この本は、お金の専門家が実の息子に宛てた「人生の攻略本」です。難しい言葉は一切なし。これからの時代を生き抜くための、超実践的な知恵が詰まっています。
- 時代に合った「新しい稼ぎ方」がわかる 「良い会社に入って定年まで勤める」という昭和の常識はもう通用しません。これからは「株式」をキーワードに、起業やスタートアップへの参加、ストックオプションなどを活用して、会社に搾取されるのではなく、会社の成長から利益を得る側になる方法がわかります。
- 迷いがなくなる「たった一つの投資法」がわかる 「投資って何を買えばいいの?」という悩みが一瞬で消えます。著者が推奨するのは、ただ一つ「全世界株式のインデックスファンド」を「長期・分散・低コスト」で持ち続けること。なぜこれが最強なのか、そのシンプルな理屈に目からウロコが落ちます。
- 「お金の不安」から解放されるヒントが見つかる お金は目的ではなく、人生を自由で豊かにするための「手段」。不要な保険や金融商品に騙されず、自分にとって本当に価値のあることにお金を使うための思考法が身につきます。
- 自分らしい「幸福」のカタチが見えてくる お金や成功だけが幸せではない。本書では、人間の幸福は「自己承認感」から来ると説きます。他人との比較から降りて、複数のコミュニティを持ち、上機嫌に暮らす。そんな「小さな幸福」を積み重ねる生き方のヒントが得られます。
2 こんな人におすすめ
- これから社会に出る学生や、就職活動に悩んでいる人
- 今の働き方やキャリアに疑問を感じている20代・30代
- 投資を始めたいけど、複雑で何から手をつけていいか分からない人
- 将来のお金について漠然とした不安を感じているすべての人
- 人生の「幸せ」って何だろう?と深く考えてみたい人
3 もう少し詳しく解説
著者・山崎元さんについて
著者の山崎元さんは、12回の転職を経験した異色の経済評論家。難しい経済やお金の話を、誰にでもわかる言葉でユーモアたっぷりに解説することで人気を博しました。本書は、ご自身ががんで闘病中、残された時間が少ない中で、大学生の息子さんのために書き下ろしたものです。だからこそ、その言葉には一切の無駄がなく、本質的で、深い愛情が込められています。
「昭和の働き方」はもうオワコン
本書で一貫して語られるのは、「時代は変わった」という事実です。かつての「良い会社に入って、真面目に働いていれば安泰」というモデルは、もはや「割が悪い」と著者は断言します。
会社に尽くすだけの「取り替え可能な労働者(タイプA)」になるな。会社の成長の果実を直接受け取れる「労働者タイプB」(=株式で報酬を得る働き方)を目指せ、というのが本書の中心的なメッセージです。
具体的には、
- 自分で起業する
- ベンチャー企業に早い段階で参加する
- ストックオプション(将来、会社の株を決められた価格で買える権利)をくれる会社で働く
といった方法が挙げられます。ポイントは、「失敗しても借金が残らない形でリスクを取る」こと。給料という「時間を売る」働き方だけでなく、資産が資産を生む「株式」の力を利用することが、これからの時代を賢く生き抜くカギなのです。
お金の増やし方は、驚くほどシンプル
投資の話になると、途端に難しく感じる人も多いでしょう。しかし、山崎さんの答えは衝撃的なほどシンプルです。
「生活費の数ヶ月分を預金に残したら、残りは全部『全世界株式のインデックスファンド』に投資しろ」
これだけです。なぜなら、プロでも市場平均に勝ち続けるのは至難の業。「平均投資有利の原則」に基づけば、世界中の株式市場全体に、低コストで分散投資できるインデックスファンドが最も合理的だからです。
難しい経済予測も、個別の株価チャートも見る必要はありません。「長期・分散・低コスト」を合言葉に、淡々と積み立てて、あとは放っておく。これが、凡人がプロに勝てる唯一にして最強の方法だと説きます。
幸せの正体は「自己承認感」
本書の魅力は、お金の話にとどまらない点です。最終章では「幸福」について深く考察されています。
山崎さんによれば、人の幸せは「自分が承認されているという感覚(自己承認感)」でほぼ決まる、とのこと。会社や一つのコミュニティだけに依存すると、その中の評価に縛られて不自由になります。だからこそ、「複数の場」を持つことが大切なのです。
そして、ユーモアを交えて語られる「モテの秘訣」。それは「相手の話を熱心に聞くこと」。これもまた、相手を承認し、良好な人間関係を築くための本質的なスキルと言えるでしょう。
「他人と比較せず、上機嫌で暮らす」。この本は、経済的な自由だけでなく、精神的な自由を手に入れるための、温かくも力強い応援歌です。