目次
結論から言うと
この本は、専業主婦やワーキングマザー、育休中のパパなど、**異なる立場で家事や育児に奮闘する人々の「リアルな本音」**を描いた物語です。これを読めば、「大変なのは自分だけじゃなかったんだ」と心が軽くなり、明日を乗り越える小さな勇気をもらえます。
1 この本を読むと得られること
- 「わかる!」が止まらない共感体験 仕事と育児の両立に限界寸前のワーママ、社会から孤立していると感じる専業主婦、理想通りにいかない育児に悩むパパ。登場人物たちのリアルな葛藤に、思わず「それ、私のこと?」と頷いてしまいます。自分の気持ちが肯定され、心がスーッと楽になります。
- 固定観念が覆される新しい視点 「専業主婦は楽でいいな」「ワーママは大変そうだけどキラキラしてる」。そんな風に思っていませんか? この本では、それぞれの立場の人が抱える“見えない苦労”が描かれています。「隣の芝生は青い」なんて言葉がありますが、実際はどの家庭も必死。他人の立場を想像するきっかけをくれます。
- モヤモヤの正体が言葉になるスッキリ感 パートナーとの家事分担、ワンオペ育児の孤独感、社会からのプレッシャーなど、日々感じるモヤモヤの正体が、物語を通して言葉になります。「私が感じていたのはこれだったのか!」と、自分の感情を整理できるでしょう。
- 人との繋がりの温かさを再発見できる 最初は対立していた登場人物たちが、交流を通じて互いを理解し、支え合っていく姿に胸が熱くなります。孤独を感じやすい現代で、誰かと話すこと、助けを求めることの大切さを改めて感じさせてくれます。
2 こんな人におすすめ
- 家事や育児に追われ、「今日も誰とも話さなかったな…」と孤独を感じている人
- 「専業主婦は気楽でいいよね」「ワーママは大変そう」など、パートナーや周りの言葉にモヤモヤしている人
- 完璧な「イクメン」を目指しているけど、理想と現実のギャップに疲れているパパ
- SNSで見る他の家庭がキラキラして見えて、つい自分と比べて落ち込んでしまう人
- 結婚や出産を前に、これからのライフプランに漠然とした不安を感じている人
3 もう少し詳しく解説
この本の著者は、『わたし、定時で帰ります。』で有名な朱野帰子さん。現代社会の「働く」を鋭く描いてきた作家さんが、今回は**「家事」という終わりのない労働**に光を当てています。
物語の中心となるのは、2人の女性です。
一人は、専業主婦の村上詩穂(むらかみ しほ)。家事が大好きで、家庭に入ることが夢でしたが、いざ主婦になると社会から孤立し、「自分は時代遅れなのでは?」と深い孤独を感じています。
もう一人は、詩穂の隣に住むワーキングマザーの長野礼子(ながの れいこ)。仕事も家庭も完璧にこなそうとしますが、心身ともに限界寸前。「専業主婦は絶滅危惧種」と詩穂に言ってしまうほど、自分の選んだ道に必死です。
さらに、エリート公務員でありながら2年間の育休を取ったパパ・**中谷達也(なかたに たつや)**や、不妊に悩む小児科医の妻・**蔦村晶子(つたむら しょうこ)**など、様々な立場の人物が登場します。
この物語の面白いところは、彼らが最初から仲良しなわけではない、という点です。むしろ、互いの暮らしを「対岸」のこととして眺め、誤解したり、時には見下したりさえします。しかし、ある出来事をきっかけに交流が始まり、それぞれの家庭が抱える「のっぴきならない事情」を知ることで、少しずつ理解を深めていくのです。
「主婦なんて社会のお荷物」「家事なんて仕事の片手間でできる」…そんな心ない言葉が飛び交う一方で、誰かがやらなければ家庭も社会も回りません。この物語は、そんな「家事」という仕事の価値を、私たちに静かに、しかし力強く問いかけてきます。
これは単なるご近所物語ではありません。現代を生きる私たち自身の物語であり、読んだ後にはきっと、あなたの隣にいる誰かに少しだけ優しくなれるはずです。