目次
結論から言うと
この物語は、「信じること」の危うさと尊さを描きながら、人は何度でもやり直せるという希望を与えてくれる、感動のどんでん返しミステリーです。巧みな伏線と二転三転する展開に心を揺さぶられ、読み終えた後には、明日を生きる勇気が湧いてくるはずです。
1 この本を読むと得られること
- 予測不能などんでん返しの興奮 最後まで結末が読めない、ジェットコースターのような読書体験ができます。いくつもの嘘と真実が複雑に絡み合い、「え、そっちが嘘だったの!?」と、あなたもきっと騙されるでしょう。その快感がたまりません。
- 心温まる人間ドラマへの感動 かつて詐欺師だった主人公たちが、心に深い傷を負った少女のために再び立ち上がる姿に胸が熱くなります。不器用だけど温かい彼らの絆に、思わず涙してしまうかもしれません。仲間っていいな、と改めて感じさせてくれます。
- 「正義」や「幸福」について考えるきっかけ 何が正しくて、何が間違っているのか。誰かを救うための嘘は許されるのか。物語を通して、現代社会の不条理や、人が幸せに生きることの意味を深く考えさせられます。あなた自身の中に、新しい価値観が芽生えるかもしれません。
2 こんな人におすすめ
- 『カラスの親指』が大好きで、あのキャラクターたちにまた会いたい人
- 先の読めないミステリーや、爽快などんでん返しが好きな人
- 人間関係に悩んでいたり、人生をもう一度やり直したいと感じている人
- 世の中の不条理に「なんでだよ!」と叫びたくなったことがある人
- 信じていた人に裏切られたり、誰かの嘘に傷ついたりした経験がある人
3 もう少し詳しく解説
著者の道尾秀介さんは、『月と蟹』で直木賞を受賞した超実力派作家。本作の前作にあたる**『カラスの親指』**は、日本推理作家協会賞を受賞し、映画化もされた大ベストセラーです。
物語は、元詐欺師で今は実演販売士として真面目に生きる主人公・**武沢竹夫(タケ)**の前に、キョウという謎の中学生が現れるところから始まります。
キョウの母親は、恋愛詐欺に遭って全財産を失い、人生に絶望して自ら命を絶ってしまいました。さらに、15年前にタケが助けた女性こそ、キョウの母親だったという衝撃の事実が明かされます。キョウはタケに**「あなたが母を助けたせいで私は生まれてきた。責任をとって」**と迫り、母を死に追いやった詐欺師グループへの復讐を誓います。
この本がただの復讐劇と違うのは、その**「仕掛け」の巧みさ**です。キョウが考えた作戦、そしてタケがかつての仲間たち(まひろ、やひろ、貫太郎、テツ)と練り上げる「人生最後の大ペテン」。二つの作戦が同時進行する中で、読者は誰が誰を欺いているのか、何が真実なのか、まったく見えなくなります。
作中に出てくる「利き五感(人によって優位な感覚が違うこと)」を合わせたトーク術や、コンビニの商品棚で最も売れる高さ「ゴールデンライン」など、リアルな実演販売のテクニックも面白く、物語に深みを与えています。
果たして、彼らの「ペテン」は成功するのか? 傷ついた少女の心は救われるのか? すべての嘘が明らかになったとき、あなたはきっと、温かい涙を流しているはずです。騙される快感と、人を信じることの尊さを、ぜひ味わってみてください。