目次
結論から言うと
この本は、単純な善悪では割り切れない「正義」の多面性を描き出す物語です。物事の表面的な情報だけで判断することの危うさを学び、多角的な視点を持つことの重要性に気づかされます。
1 この本を読むと得られること
- 「正義」の奥深さがわかる 犯人の歪んだ正義、それを裁く検察の正義、遺族の復讐という正義、そして悪魔と呼ばれる弁護士が貫く正義。それぞれの立場から見る「正義」を知ることで、自分の価値観が揺さぶられ、物事を一面だけで判断しなくなります。
- 情報に踊らされない力がつく センセーショナルな事件報道の裏で、何が本当に起きているのか。マスコミやネットの風評に惑わされず、物事の本質を見抜く「メディアリテラシー」が自然と養われます。
- 極上のエンタメ体験ができる 「どんでん返しの帝王」の異名を持つ中山七里さんならではの、息を呑む法廷バトルと衝撃の結末が待っています。難解な法律用語も物語の中でスッと頭に入ってくるので、最高の知的エンターテインメントとして楽しめます。
2 こんな人におすすめ
- ニュースを見て「犯人はとんでもないヤツだ」と単純に憤りを感じてしまう
- 物事を白か黒かで判断しがちで、グレーゾーンを受け入れるのが苦手
- ハラハラドキドキする逆転劇や、どんでん返しのあるミステリーが大好き
- 人間の深い心理や、社会が抱える問題に興味がある
3 もう少し詳しく解説
著者の中山七里さんは、『さよならドビュッシー』で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞してデビューした人気作家。特に、本作の主人公である御子柴礼司(みこしばれいじ)弁護士が登場するシリーズは、ドラマ化もされるなど絶大な人気を誇ります。
物語は、高級有料老人ホームで介護士の忍野忠泰(おしのただやす)が9人の入所者を惨殺するという衝撃的な事件から始まります。「生産性のない老人は社会の害悪。殺したのは天誅であり、救済だ」と主張する忍野。世間が彼を「令和最悪のバケモノ」と断罪する中、弁護人として名乗りを上げたのは、かつて自らも残虐な事件を起こした元少年A、“悪魔の弁護士”御子柴礼司でした。
この本のすごいところは、ただの法廷ミステリーで終わらない点です。御子柴は法廷で、忍野の犯行が、実はSNS上の**〈先生〉と名乗る謎の人物による洗脳の結果**だったことを暴きます。忍野は殺人鬼であると同時に、巧妙な計画の駒として利用された被害者でもあったのです。
そして、物語のクライマックスで明かされる、さらなる衝撃の真実。その〈先生〉の正体は、なんと被害者遺族の一人でした。彼は莫大な遺産を独り占めするために、忍野を操って邪魔な親族を殺させ、他の8人はその動機を隠すための犠牲者だったのです。
最終的に忍野は死刑判決を受け入れますが、御子柴との対話を通じて洗脳から解放され、「バケモノ」ではなく一人の「人間」として罪を償う道を選びます。なぜ御子柴は、悪名高いこの事件の弁護を引き受けたのか?その理由がラストで明かされた時、あなたはきっと涙するでしょう。
『殺戮の狂詩曲』は、あなたの「当たり前」を根底から覆す一冊。ぜひ手に取って、この深い問いと衝撃を体験してみてください。