正義とは何か?中山七里『テミスの剣』が暴く、たった一つの過ちが招く悲劇

テミスの剣

テミスの剣

ISBN: 4167908042
3分で読める

結論から言うと

この本は、たった一つの過ちと沈黙が、警察、検察、裁判所という巨大な組織の中で「冤罪」という最悪の悲劇を生み出す過程を描いた、超一級の社会派ミステリーです。 読めば、「正義ってなんだろう?」と深く考えさせられ、自分の仕事や日常における判断の重みを再認識すること間違いなし!

1 この本を読むと得られること

  1. 「正義」の多面性を知れる 主人公の刑事、被害者遺族、そして罪を着せられた青年とその家族。それぞれの立場から見た「正義」は全く異なり、誰かの正義が、他の誰かを深く傷つけることがあります。自分の信じる正義が絶対ではないという、物事を多角的に見る視点が身につきます。
  2. 組織と個人のリアルな葛藤がわかる 主人公の刑事が、組織の論理と個人の良心の間で苦悩する姿は、会社員など組織で働く人なら誰でも共感できるはず。「不正を見て見ぬふりをするのか」「声を上げるのか」その選択が、どれほど重いものかを突きつけられます。
  3. 息もつかせぬミステリー体験ができる 「どんでん返しの帝王」の異名を持つ著者ならではの、最後まで目が離せないストーリー展開が魅力です。冤罪事件の真相、数十年後に起こる新たな殺人事件、そして全ての裏で糸を引く黒幕の正体…。ページをめくる手が止まらなくなります。
  4. 司法制度の裏側に少し詳しくなれる 強引な取り調べ、証拠の捏造、裁判のあり方など、日本の司法が抱える問題点をリアルに感じることができます。「疑わしきは罰せず」という原則が、いかに脆いものかを知り、ニュースを見る目が少し変わるかもしれません。

2 こんな人におすすめ

  • どんでん返しのあるミステリー小説が好きな人
  • 社会問題を扱った、考えさせられる物語を読みたい人
  • 仕事で「正しさ」や「ルール」について悩んだことがある人
  • 組織の中で、自分の意見を言うべきか迷っている人
  • 単純な勧善懲悪のストーリーでは物足りない人

3 もう少し詳しく解説

『さよならドビュッシー』や『連続殺人鬼カエル男』などで知られる中山七里さんは、「どんでん返しの帝王」の異名を持つ大人気ミステリー作家。社会問題を巧みに取り入れ、読者に深い問いを投げかける作風で多くのファンを魅了しています。

本作は、単なる犯人当てのミステリーではありません。新米刑事だった主人公・渡瀬が、自らも加担してしまった冤罪事件と生涯をかけて向き合い、刑事として、一人の人間として成長していく姿を描く、重厚な人間ドラマです。

ベテラン刑事・鳴海の「どんな手を使っても犯人を挙げる」という強烈な正義。エリート検察官が隠し持つ、おぞましい秘密。そして、誤った判決を下してしまった裁判官の苦悩。事件に関わる人々のリアルな感情が、物語に深い奥行きを与えています。

タイトルの『テミスの剣』は、ギリシャ神話に登場する「法の女神」テミスに由来します。彼女は右手に力(権力)を象徴する「剣」を、左手には公平さを意味する「秤」を持っています。しかし、物語が示すように、正義という「秤」を持たない「剣」は、時に無実の人を傷つけるただの暴力と化してしまいます。この物語は、権力という剣を振るうことの恐ろしさと、その責任の重さを、私たちに鋭く問いかけてくるのです。

この本を読んでみたくなりましたか?

気になった方は、ぜひ実際に手に取って読んでみてください。

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