目次
結論から言うと
この本は、香港を舞台にした息をのむ金融サスペンスでありながら、「国家と個人のお金の関係」というタブーを解き明かす最高の入門書です。 物語を楽しみながら、タックスヘイヴンや資産防衛のリアルな知識が身につき、自分のお金に対する見方が180度変わる一冊です。
1 この本を読むと得られること
- 金融の「裏側」の知識がリアルにわかる 「マネーロンダリング(資金洗浄)」や「タックスヘイヴン(租税回避地)」といった、ニュースで聞くけどよくわからない言葉の意味が、物語を通して手に取るようにわかります。主人公が顧客に説明する形で、複雑な金融の仕組みが自然と頭に入ってきます。
- 国家と税金のカラクリが見えてくる なぜ富裕層は海外に資産を移すのか? 私たちが汗水たらして稼いだお金から、国家はどうやって税金を取っているのか? そのシステムの本質と、そこから「合法的に」逃れるための知識が得られます。税金について、これまで考えたこともなかった視点が開けますよ。
- 極上のエンタメ体験ができる 謎の美女からの危険な依頼、ヤクザとの命がけの駆け引き、そして50億円の行方――。まるで映画のようなスリリングな展開に、ページをめくる手が止まらなくなります。普段あまり本を読まない人でも、この物語にはきっと引き込まれるはずです。
- 自分のお金を守る「武器」が手に入る この物語で描かれる手法はフィクションですが、その根底にある知識は非常にリアル。グローバル化が進む現代で、自分の資産をどう守り、どう賢く運用していくべきか。そのための具体的なヒントと視点が得られます。
2 こんな人におすすめ
- 「タックスヘイヴン」や「オフショア」って言葉は聞くけど、実はよくわかっていない人
- 普通のビジネス書や真面目な投資本には飽きてしまった人
- お金持ちがどうやって税金対策をしているのか、その「裏ワザ」に興味がある人
- ハラハラドキドキするサスペンス小説や映画が好きな人
- 将来のために資産運用を考えたいけど、何から学べばいいかわからない人
3 もう少し詳しく解説
著者と本書のリアリティ
著者の橘玲氏は、作家でありながら「海外投資を楽しむ会」の創設メンバーでもある金融のプロフェッショナル。だからこそ、本書で描かれる金融スキームは、元国税局の幹部が「とんでもない作家が出てきた」と舌を巻くほどリアルです。
物語は、香港在住のファイナンシャル・アドバイザー「工藤秋生」が、日本の顧客の海外口座開設を手伝う場面から始まります。香港上海銀行(HSBC)での具体的な手続き、非居住者だからこそ使える節税テクニックなどが、まるでマニュアルのように詳細に描かれています。
ストーリーの魅力
物語は、田舎の土建屋夫婦の資産フライトを手伝う穏やかな序盤から、謎の美女・麗子から持ち込まれた「5億円」の利益移転という危険な依頼をきっかけに、一気に加速します。
麗子の依頼の裏には、巧妙に仕組まれた巨大な詐欺計画と、ヤクザの若頭・黒木が率いる裏社会の存在がありました。秋生は、麗子が持ち逃げした「50億円」の行方を追ううちに、欲望と裏切りが渦巻く巨大な事件の渦中へと巻き込まれていきます。
単なる金融知識の解説本ではなく、手に汗握るサスペンスとして一級品の面白さを誇るのが、この本の最大の魅力。登場人物たちの息詰まる心理戦と、香港の熱気が伝わってくるような情景描写に、あなたもきっと夢中になるはずです。
「誰もが人生をやり直すことができるわけじゃない。だが、努力することは誰でもできる」
物語の最後に放たれるこの言葉は、お金や国家という大きなシステムの中で、個人としてどう生き抜くべきかを問いかけてきます。ただ面白いだけでなく、深く考えさせられる。そんな一冊を、ぜひ手に取ってみてください。