目次
結論から言うと
この本は、絶望的な状況から立ち上がる少女の感動的な音楽ストーリーと見せかけて、最後の最後で全てがひっくり返る、極上のミステリーです。読み終えた後には、感動と共に「やられた!」という爽快な衝撃があなたを待っています。
1 この本を読むと得られること
- 圧倒的なカタルシスを味わえる 全身大火傷という壮絶な運命を背負った主人公が、リハビリやいじめ、家族の死といった困難にピアノ一つで立ち向かっていきます。彼女がコンクールの舞台で全てを解き放つクライマックスは、まさに圧巻!読んでいるだけで胸が熱くなり、読み終えた後には心がスッと軽くなるような感覚を味わえます。
- クラシック音楽が好きになる ショパンの『革命のエチュード』や、ドビュッシーの『月の光』など、誰もが一度は聞いたことのある名曲が物語を彩ります。演奏シーンの描写がとにかくリアルで、まるでコンサートホールにいるかのような臨場感!音楽の知識がなくても、その情景や主人公の感情が手に取るように伝わってきて、自然とクラシック音楽の世界に引き込まれます。
- 「どんでん返しの帝王」の仕掛けに驚愕する 感動の物語に浸っていると、終盤でとんでもない真実が明かされます。散りばめられた伏線が一気に回収され、物語が全く違う顔を見せる瞬間の衝撃は鳥肌もの。「まさか、そんなことが…」と思わず声を上げてしまうほどの、見事などんでん返しを体験できます。
- 逆境に立ち向かう勇気がもらえる 「どうして自分だけがこんな目に…」そんな風に落ち込んでしまう時、主人公の姿はきっとあなたの背中を押してくれます。彼女を支えるイケメンピアニスト・岬洋介の言葉も心に響くものばかり。困難な状況でも諦めずに前に進むためのヒントが詰まっています。
2 こんな人におすすめ
- 大きな挫折を味わい、どう立ち直ればいいか分からなくなっている人
- 努力が報われる「スポ根」のようなサクセスストーリーで感動したい人
- 最後にあっと驚くような、巧妙などんでん返しが仕掛けられたミステリーが好きな人
- クラシック音楽、特にピアノの世界に興味がある、またはこれから触れてみたい人
- ただの感動モノじゃ物足りない!刺激的な読書体験を求めている人
3 もう少し詳しく解説
『さよならドビュッシー』の著者・中山七里さんは、その巧みなプロットと衝撃的な結末から「どんでん返しの帝王」とも呼ばれる人気ミステリー作家です。本書は、その名を世に知らしめた第8回『このミステリーがすごい!』大賞の受賞作でもあります。
この物語のすごいところは、「音楽青春小説」と「本格ミステリー」という、全く異なるジャンルを見事に融合させている点です。
物語の前半は、ピアニストを目指す主人公「あたし」が、突然の火事で祖父と従姉妹を亡くし、自らも全身に大火傷を負うという絶望から始まります。声も、自由に動く指も失い、変わり果てた自分の姿に苦悩しながらも、彼女は再びピアノの前に座ります。そこへ現れるのが、謎めいた天才ピアニスト・岬洋介。彼の魔法のような指導のもと、主人公は驚異的な回復を遂げ、コンクール出場を目指します。
しかし、物語は単なる感動的な再起ストーリーでは終わりません。 主人公の周りで次々と起こる不審な事故。祖父が遺した莫大な遺産をめぐる家族の確執。そして、母親の突然の死…。物語が進むにつれて、ミステリーの色合いはどんどん濃くなっていきます。
探偵役となるのは、ピアノの先生である岬洋介。彼は司法試験に合格した経歴を持つ頭脳明晰な人物でもあり、鋭い観察眼で事件の真相に迫っていきます。そして、全ての謎が解き明かされるクライマックスで、読者はこの物語に隠された本当の姿を知り、衝撃を受けることになるのです。
逆境に立ち向かう主人公の姿に涙し、圧巻の演奏シーンに心酔し、そして最後のどんでん返しに頭を抱える。一度で三度おいしい、まさにエンターテインメントの傑作。読書が苦手な方でも、ページをめくる手が止まらなくなること間違いなしの一冊です。