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結論から言うと
この物語は、単なるグロテスクな連続殺人ミステリーではありません。「カエル男」と名乗る犯人が引き起こす恐怖を通して、人間の心の奥底にある狂気と、社会が抱える問題点を鋭くえぐり出す社会派サスペンスです。一度読み始めたら、衝撃的な展開の連続でページをめくる手が止まらなくなり、最後のどんでん返しに必ず声を上げて驚くことになるでしょう。
1 この本を読むと得られること
- 息もつかせぬスリルと興奮 次々と起こる猟奇的な事件と、犯人「カエル男」が残す不気味なメッセージ。市民がパニックに陥っていく様子がリアルに描かれ、まるで自分がその町にいるかのような緊迫感を味わえます。ジェットコースターに乗っているような感覚で、一気に物語の世界に引き込まれます。
- 「完全に騙された!」という快感 「どんでん返しの帝王」の異名を持つ著者・中山七里さんの真骨頂がここにあります。物語のあちこちに巧妙な伏線が張り巡らされており、「犯人はこの人か?」と思った次の瞬間には、その予想が覆されることの連続。そして、最後に明かされる真実は、あなたの想像をはるかに超えてくるはずです。
- 社会問題について考えるきっかけ 物語の核には「心神喪失者の責任能力」を問う「刑法39条」という重いテーマがあります。犯人は本当に「異常者」なのか? 正義とは何か? メディアや大衆心理が事件に与える影響は? エンターテイメントとして楽しみながらも、現代社会が抱える問題について深く考えさせられます。
- 魅力的なキャラクターたちとの出会い ベテラン刑事・渡瀬の鋭い洞察力と、熱血漢の若手刑事・古手川の成長物語としても楽しめます。特に、普段はやる気なさそうに見える渡瀬が時折見せる刑事の矜持には、しびれること間違いなし。彼らと共に犯人を追いかける感覚は、ミステリー好きにはたまりません。
2 こんな人におすすめ
- 予測できないどんでん返しが好き 「最後の1行で世界が変わる」ような物語に鳥肌を立てたいあなた。この作品は、その期待を裏切りません。
- 普通のミステリーに飽きてしまった ただ犯人を当てるだけでなく、人間の心理や社会の闇に深く切り込んだ、読み応えのある作品を求めている人におすすめです。
- ハラハラドキドキしながら一気に読みたい ページをめくる手が止まらない、没入感のある小説を探しているなら、まさにこれです。読書が苦手な人でも、映像的な描写とスピーディーな展開に夢中になるでしょう。
- ちょっと怖くて、後味の悪い話(イヤミス)が好み 事件の猟奇的な描写や、人間の恐ろしさにゾクッとしたい方にはたまらない一冊。読了後、しばらくタイトルの意味を考えてしまうはずです。
3 もう少し詳しく解説
著者について
著者の中山七里さんは、『さよならドビュッシー』で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞してデビューして以来、次々とヒット作を生み出している人気作家です。その作風は非常に幅広く、心温まる音楽ミステリーから、本作のような社会問題を鋭くえぐるサスペンスまで様々。どんなジャンルでも読者を驚かせる「どんでん返し」が巧みで、「どんでん返しの帝王」とも呼ばれています。
本書の特徴と魅力
物語は、埼玉県飯能市で発見されたおぞましい死体から始まります。高層マンションから吊るされた女性の遺体、その傍らには「きょう、かえるをつかまえたよ。」という稚拙なメモが…。これを皮切りに、被害者の名前が「あいうえお順」になっていることが判明し、街は「カエル男」の恐怖に包まれます。
この物語のすごいところは、単なる猟奇殺人事件の犯人捜しに終わらない点です。
- 加速する恐怖とパニック: 「次は『エ』のつく名前の人が危ないのでは?」そんな噂が広まり、市民は疑心暗鬼に陥ります。マスコミは過熱報道で不安を煽り、警察には抗議が殺到。ついには市民による自警団が結成され、街全体が狂気の渦に巻き込まれていく様子は、非常にリアルで恐ろしいです。
- 魅力的な刑事コンビ: この難事件に挑むのが、ベテラン刑事・渡瀬と若手刑事・古手川。飄々としながらも核心を突く渡瀬と、過去のトラウマを抱えながらも正義感に燃える古手川。二人の対照的なキャラクターが、時にぶつかり、時に協力しながら真相に迫っていく過程は、物語の大きな見どころです。
- 仕掛けられた「罠」: 最大の魅力は、やはりその構成力。あなたは作中の登場人物たちと一緒に、まんまと犯人の仕掛けた罠にはまっていきます。「犯人はきっとこの人だ」という確信が、最後の最後で根底から覆される快感をぜひ味わってください。読み終わった後、もう一度最初から読み返したくなること間違いなしです。