目次
結論から言うと
この本は、データ可視化は単なるグラフ作りではなく、データから「正しい問い」を見つけ、人を動かすための最強のコミュニケーションツールだと教えてくれます。数字の羅列が、一目で相手に伝わる「意味のある情報」に変わる、まさに思考の武器を手に入れるための一冊です。
1 この本を読むと得られること
- 人を惹きつけるプレゼン能力が身につく ただ数字を並べたグラフではなく、相手の心に響く「ストーリー」としてデータを語れるようになります。データを通じて「なぜこれが必要なのか」を説得力を持って伝えられるようになり、あなたの提案や報告が見違えるほど伝わりやすくなります。
- 問題の本質を見抜く「問い」を立てられる データを見て「何が本当の課題か?」という正しい質問を見つける力がつきます。著者は「間違った質問への正確な答えより、正しい質問へのおおよその答えのほうがずっとよい」と述べています。この本は、その「正しい質問」を見つけるための最短ルートを示してくれます。
- 目的に合った最適なグラフを選べるようになる なんとなく棒グラフや円グラフを使っていた状態から、「なぜこのグラフなのか」を自信を持って説明できるようになります。本書には、数値、言葉、時間、場所、関係といった5つの目的別に最適なチャートがカタログのようにまとめられており、実務で迷ったときにサッと引ける辞書としても使えます。
- デザインとデータの両方の視点が手に入る 情報を「正確に」伝えるだけでなく、「わかりやすく」「美しく」見せるための原理原則が学べます。人間の脳がどのように情報を認識するかに基づいたデザインのコツを知ることで、見る人の負担を減らし、直感的な理解を促す資料が作れるようになります。
2 こんな人におすすめ
- 分析結果を報告しても「で、結局何が言いたいの?」と上司に言われてしまうデータ分析者
- もっとユーザーに響くデータ表示をしたいけど、どうすればいいかわからないUI/UXデザイナーやエンジニア
- チームの状況やプロジェクトの課題を、一目でわかるダッシュボードで共有したいマネージャー
- データはたくさんあるけど、どう活かせばビジネス戦略に繋がるか途方に暮れているマーケティング・企画担当者
- これから必須になる「データリテラシー」を、小手先のテクニックではなく本質から学びたい学生や若手社会人
3 もう少し詳しく解説
著者はどんな人?
著者の矢崎裕一さんは、もともとUIデザイナーやアートディレクターとして活躍し、その後データ可視化の専門家として独立した方です。デザインのプロとしての「どう見せるか」という視点と、データを扱うプロとしての「何を伝えるか」という視点を両方持っているのが大きな強みです。だからこそ、本書は単なる技術解説に終わらず、コミュニケーションツールとしてのデータ可視化を深く掘り下げています。
この本のどこがスゴイの?
本書の特徴は、データ可視化に関する知識を「基礎編」と「実務編」に分け、理論から実践までを網羅的に解説している点です。特にすごいのが**「チャートの文法」**という考え方。
これは、どんなグラフも「スペース(どこに配置するか)」と「ビジュアル(どんな形や色にするか)」などの要素の組み合わせでできている、と捉える考え方です。この「文法」を理解することで、単に既存のグラフを真似るだけでなく、目的に合わせて自分で最適な表現を組み立てられるようになります。まさに、データ可視化の「応用力」が身につくわけです。
また、統計学、コンピュータサイエンス、情報デザイン、ストーリーテリングなど、さまざまな分野に散らばっていた知識を「ひとつながりの体系」として整理してくれているため、これまで断片的な知識しかなかった人も、頭の中がスッキリ整理されるはずです。
データと向き合うすべての人にとって、本書は自分の考えをクリアにし、他者を動かすための強力な羅針盤となってくれるでしょう。