目次
結論から言うと
認知症の人の「困った言動」には、本人なりの理由があります。本書は、その気持ちに寄り添う**「言いかえフレーズ」**を学ぶことで、介護のイライラを減らし、家族みんながラクになる方法を教えてくれる一冊です。 つい感情的に叱ってしまう毎日から、お互いが穏やかに過ごせる毎日に変わるヒントがここにあります。
1 この本を読むと得られること
- すぐに使える「言いかえ」の具体例が手に入る 「さっき食べたでしょ!」と責める代わりに、「お茶でも入れようか?」と話題を変える。本書には、こうした具体的なNG・OKフレーズが満載。今日からすぐに実践できる言葉の引き出しが増えます。
- 認知症の人の「心の中」がわかる なぜ同じものを何度も買ってくるのか?それは「これを切らしたら大変だ」という不安からかもしれません。行動の裏にある本人の気持ちを理解することで、腹が立つ言動も「そういうことだったのか」と受け止められるようになります。
- 介護のストレスが減って、心が軽くなる 相手の行動の理由がわかれば、感情的に対応することが減ります。本書のテクニックは、認知症の人だけでなく、介護するあなた自身の心を守るためのものでもあります。イライラが減ることで、心に余裕が生まれます。
- 一人で抱え込まなくていい、と安心できる 「介護は家族だけでやるものじゃない」と著者は言います。地域包括支援センターやデイサービスなど、頼れる専門家や公的サービスがあることを知れば、「一人で頑張らなきゃ」というプレッシャーから解放されます。
2 こんな人におすすめ
- 認知症の親の言動に、ついイライラして声を荒らげてしまう
- 「また同じこと聞いて…」と、何度も同じ質問をされるのにウンザリしている
- 「財布を盗んだでしょ!」という"もの盗られ妄想"にどう対応していいかわからない
- 介護に正解がなく、一人で抱え込んでしまい精神的にクタクタ
- 親のプライドを傷つけずに、穏やかなコミュニケーションを取り戻したい
3 もう少し詳しく解説
この本の著者は、認知症心理学の専門家として40年以上研究を続けてきた佐藤眞一氏。膨大な事例と科学的な知見に基づいているので、内容の信頼性は抜群です。
特徴1:とにかく具体的でわかりやすい!
本書の最大の魅力は、「言いかえフレーズ」の豊富さです。 症状の進行度(疑い・軽度・中等度・重度)に分けて、よくある31のケースが紹介されています。例えば…
- 【NG】 「さっきも聞いたでしょ。覚えてないの?」
- 【OK】 「カレンダーにメモしておくね」
このように、NGフレーズとOKフレーズがイラスト付きで対比されているので、パッと見てすぐに理解できます。読書が苦手な方でも、辞書のように気になるところから読めるのが嬉しいポイントです。
特徴2:「感情」にフォーカスしたアプローチ
本書で一貫して語られるのは**「記憶は忘れても、感情ははっきり残る」**という事実です。
認知症の人は、言われた内容を忘れても、「叱られた」「嫌な気分にさせられた」というネガティブな感情は心に刻まれてしまいます。だからこそ、「何を言うか」だけでなく**「どんな雰囲気で伝えるか」**が非常に重要なのです。
本書が提唱する基本姿勢は、以下の3つです。
- 怒らない
- 否定しない
- 共感する
例えば、「もの盗られ妄想」で「あんたが盗ったんだろ!」と言われても、「違う!」と否定するのではなく、「大変だね、一緒に探そうか」と共感することで、本人の不安を和らげることができます。
これは相手を「コントロール」しようとするのではなく、気持ちに寄り添って「ケア」するという、本書の優しい哲学の表れです。
特徴3:介護は「チーム戦」だと教えてくれる
「介護は家族だけで抱え込まないで」というメッセージも、本書の重要な柱です。 認知症は老化現象ではなく、脳の「病気」。だから、介護のプロと**「チーム」**を組むことが大切だと説いています。
もしあなたが一人で悩んでいるなら、まずは**「地域包括支援センター」**に電話してみてください。そこが、あなたの介護を支えるチームづくりの第一歩になります。
親との関係に疲れ果ててしまう前に、ぜひこの本を手に取ってみてください。きっと、あなたの心を軽くし、家族の笑顔を取り戻すためのヒントが見つかるはずです。