目次
結論から言うと
ネットで叩かれる悪人だけを殺す謎の殺人鬼『森のくまさん』。彼は正義のヒーローか、ただの殺人鬼か? この本は、その答えをあなたに突きつけます。 読み終わった後、自分の心の中にある「正義感」の危うさに気づき、エンタメとして楽しみながらも深く考えさせられる一冊です。
1 この本を読むと得られること
- 心拍数が上がるスリルを味わえる 童謡を口ずさみながら行われる不気味な犯行シーンは、ページをめくる手が止まらないほどの没入感!ただグロテスクなだけでなく、じわじわと精神的に追い詰める描写は、ホラー映画が好きな人も満足できるはずです。
- 自分の「正義」が揺さぶられる体験 被害者は同情できない悪人ばかり。読んでいるうちに「犯人を応援したい」という気持ちと「でも殺人は許されない」という倫理観の間で、心がグラグラと揺さぶられます。あなたはどちらの気持ちに傾くでしょうか?
- ネット社会のリアルな怖さを知れる ネットリンチや私刑(個人的な制裁)というテーマは、SNSが当たり前になった現代だからこそ、より一層リアルに感じられます。「もし自分がターゲットになったら?」と想像すると、背筋が凍るはずです。
- ラストのどんでん返しに衝撃を受ける 「犯人は誰なんだろう?」と予想しながら読み進めるのもミステリーの醍醐味。しかし、この物語の犯人の正体と、その歪んだ動機が明らかになったとき、あなたはきっと驚愕するでしょう。巧みな伏線回収も見事です。
2 こんな人におすすめ
- 単純なヒーローものや勧善懲悪の物語に飽きてしまった人
- 「正義ってなんだろう?」と一度でも考えたことがある人
- ネットの炎上や、集団で誰かを叩く風潮に違和感を感じる人
- 最後に「そうだったのか!」と驚きたい、どんでん返しミステリーが好きな人
- ただ怖いだけじゃない、心に爪痕を残すサイコ・サスペンスを読みたい人
3 もう少し詳しく解説
著者の背景
この『公開処刑人森のくまさん』は、有名なミステリー賞『このミステリーがすごい!』大賞で、一度は選考から漏れたものの、編集部が「この冒頭の面白さは世に出すべきだ!」と一年越しで出版を決めた、伝説的な「隠し玉」作品。つまり、プロがその面白さを認めた、いわばお墨付きの一冊なんです。
本の特徴や独自性
なんといっても、あの誰もが知る童謡「森のくまさん」を歌いながら行われる処刑シーンのインパクトが絶大です。残虐な行為と、のどかな歌のミスマッチが、他にない不気味さと恐怖を生み出しています。また、犯行後にネット掲示板へ声明を出すという現代的な手法も、物語に奇妙なリアリティを与え、読者をぐいぐい引き込みます。
より深い内容の解説
物語は、法で裁かれない「サイテーな人間」たちを次々と殺害する『森のくまさん』の登場から始まります。被害者は、援助交際で料金を踏み倒すサラリーマンや、客を騙して金を巻き上げるキャバ嬢など、お世辞にも同情しにくい人物ばかり。ネット上では「森くまは神だ」とヒーロー扱いする人々まで現れ、事件は社会現象となっていきます。
しかし、物語が進むにつれて、「正義」を振りかざす犯人の恐ろしい素顔が明らかになっていきます。
真犯人は、エリート大学生を装い、警察官の名前を騙っていたフリーターの青年・九門正則。彼は、警察官になる夢を絶たれたコンプレックスと歪んだ自己顕示欲から、自殺志願の女子高生を言葉巧みに操り、「森のくまさん」として犯行を重ねていました。
彼の動機は、純粋な正義感ではなく、自分を認めない社会への復讐と、「神」として君臨したいという歪んだ欲望だったのです。この物語は、誰かを一方的に「悪」と決めつけ、私的に裁くことの危うさと、その感情を簡単に増幅させてしまうネット社会の闇を、エンターテイメントとして見事に描き出しています。あっという間に読めて、読んだ後にはズシンと心に残る。そんな強烈な一冊です。