目次
結論から言うと
この本は、元オペ室看護師の著者が描く、壮絶でリアルな現場のコミックエッセイです。「人の肉が焼けるにおい」から始まる衝撃的な日常を通して、医療現場の厳しさと、そこにある命の尊さ、そして働く人々の温かさを感じられます。 読めば、医療ドラマの向こう側にある真実に触れ、医療従事者への見方が変わり、自分の「生」を深く見つめ直すきっかけになるはずです。
1 この本を読むと得られること
- 知られざる「オペ室」のリアルな日常がわかる 普段は決して見ることのできない手術室の内部。「機械出し」「外回り」といった看護師の専門的な仕事内容や、一癖も二癖もある医師たちとの人間関係、緊迫した空気感まで、当事者だからこそ描けるリアルな日常が覗けます。
- 「命」の重みと尊さを五感で感じられる 四肢切断、命が誕生する帝王切開、自殺未遂者の緊急手術…。本書で描かれるのは、まさに生死の最前線です。命がどれほど脆く、そして同時に力強いものなのかを痛感させられます。「当たり前の日常」が、いかに奇跡的なことかに気づかされます。
- 医療従事者への感謝とリスペクトが深まる 手術は数時間に及ぶこともあり、その間ずっと続く極度の緊張感。膨大な知識と精密な技術、そして何より強い精神力が求められる仕事だとわかります。患者さんのために奮闘する姿に、自然と「ありがとう」という気持ちが湧いてくるでしょう。
- 働くことの厳しさとやりがいを学べる 新人時代の失敗や葛藤、理不尽なことで怒られたり、自分の無力さに落ち込んだり…。主人公が悩みながらも成長していく姿に、社会人なら誰もが共感するはず。困難を乗り越えた先にある「やりがい」とは何かを考えるきっかけになります。
2 こんな人におすすめ
- 医療ドラマが好きで、もっとリアルな現場を知りたい人
- 看護師や医療系の仕事に興味がある学生さんや若手社会人
- 今の仕事が「自分に向いてないかも…」と悩んでいる人
- 活字は苦手だけど、サクッと泣けて学びのある本が読みたい人
- 日々の生活に追われ、「命」について考える機会が少ないと感じる人
3 もう少し詳しく解説
著者自身の体験からくる圧倒的リアリティ
著者の人間まおさんは、元オペ室看護師。この漫画は、ご自身の体験をベースに描かれたコミックエッセイです。だからこそ、現場の空気感や感情の動きが驚くほどリアル。「人の肉が焼けるにおい」「骨を切断する音」「滑る血液の感触」といった五感に訴えかける描写は、読んでいるこちらまでドキッとするほど。
コミックエッセイなので、活字が苦手な方でもスラスラ読めるのが大きな魅力。シリアスなテーマを扱いながらも、著者のユーモアあふれる視点で描かれているため、重くなりすぎずに命の現場を体感できます。
「機械出し」は料理番組のアシスタント!?
手術室の看護師の仕事は、患者さんのケアだけではありません。本書の大きなテーマの一つが「機械出し」という仕事。
これは、手術の進行状況を読みながら、執刀医にメスやハサミなどの器具をタイミングよく渡す重要な役割です。作中では「料理人が3人いる料理番組でアシスタントを1人でするようなもの」と例えられています。医師それぞれの「こだわり」や「クセ」まで把握し、次の展開を予測して動く必要があり、まさに職人技。この仕事の難しさと面白さが、本書を読むとよくわかります。
「おめでとう」と言える手術と、「生と死」の隣り合わせ
手術室は、病気やケガを治すだけの場所ではありません。帝王切開のように、新しい命が誕生する「おめでとう」と言える手術もあれば、自ら命を絶とうとした人が運び込まれてくることもあります。
作中では、「生きたい人」と「死にたかった人」が、壁一枚を隔てた隣の部屋で同時に手術を受ける場面も。そんな極限の状況で、看護師たちが何を感じ、どう患者さんと向き合っているのか。命の重さについて、深く考えさせられるエピソードが満載です。
ただ怖い、大変なだけじゃない。手術室は、人の命にどこまでも寄り添い、働く人自身も成長させてくれる場所なんだと教えてくれる一冊です。