【3分で読める】『熟年売春』が暴く、普通の女性が体を売る日本のヤバい現実

熟年売春

熟年売春

ISBN: 4813022650
4分で読める

結論から言うと

この本が突きつけているのは、「普通の女性が生活のために体を売るという、かつてのフィクションが現実になった」という日本の厳しい現実です。そして、その背景には、個人の問題だけでは片付けられない深刻な「女性の貧困」と「社会の格差」が存在します。 この本を読めば、ニュースで聞く「貧困」や「格差」といった言葉が、具体的な人々の物語としてリアルに感じられ、社会を見る目が変わるはずです。

1 この本を読むと得られること

  1. 「女性の貧困」のリアルな実態がわかる 「子どもの学費のために」「住宅ローンを返すために」「あと月5万円あれば…」。本書に登場する女性たちの多くは、特別な浪費家ではありません。ごく普通の生活を送るために、やむを得ず体を売る選択をしています。その生々しい告白から、統計データだけでは見えない貧困の現実を知ることができます。
  2. 売春の世界にも存在する「格差」を学べる 体を売れば誰もが高収入を得られるわけではありません。若さや美貌、コミュニケーション能力を持つ女性は高収入を得る一方で、多くの女性は低賃金で働き、中には「体を売ってさえも生活できない」状況に追い込まれる人もいます。本書では、愛人として優雅に暮らす女性と、日給数千円で働く女性の「明と暗」が描かれ、厳しい格差の現実を突きつけられます。
  3. 社会構造の問題点が見えてくる 女性たちが追い詰められる背景には、非正規雇用の増加、男女間の賃金格差、機能不全に陥った家族や地域コミュニティといった、社会全体の構造的な問題があります。個人の「自己責任」では片付けられない、日本の社会が抱える課題を深く理解できます。
  4. 多様な女性たちの「本音」に触れられる 経済的な理由だけでなく、「夫とのセックスレス」「社会からの孤立感」「承認欲求」など、女性たちが体を売る動機は様々です。彼女たちの赤裸々なインタビューを通して、人間の複雑な心理や多様な生き様を垣間見ることができます。

2 こんな人におすすめ

  • ニュースで「貧困」や「格差」と聞くけど、いまいちピンとこない人
  • 今の日本の社会で、本当に何が起きているのかリアルな話を知りたい人
  • 自分の生活は大丈夫でも、将来に漠然とした不安を感じている人
  • 人間のディープな話や、社会派のルポルタージュが好きな人

3 もう少し詳しく解説

この本の著者、中村淳彦さんは、長年にわたりアダルト業界や風俗、貧困問題などをテーマに取材を続けてきたノンフィクションライターです。本書も、著者が実際に会って話を聞いた熟年女性たちのインタビューがベースになっており、その言葉一つひとつが非常にリアルで重みがあります。

「普通の女性」が体を売る時代

本書で一貫して描かれるのは、かつて「特別な事情」がある女性の仕事だと思われていた風俗が、今やごく普通の主婦やOLの副業先になっているという事実です。例えば、住宅ローン返済のために20年間も売春を続ける主婦や、息子の大学進学費用を稼ぐためにAV女優になったシングルマザーが登場します。彼女たちは決して特別な存在ではなく、社会の変化の波をもろに受けた「普通の人々」なのです。

逃れられない「売春格差」

本書は、体を売る女性たちの間の残酷なまでの「格差」も浮き彫りにします。

  • 【明】 46歳未婚の春野さんは、美貌を武器に交際クラブなどで働き、月収60万円を稼ぎます。愛人としてタワーマンションの最上階で暮らした経験も。
  • 【暗】 53歳の元風俗嬢・安西さんは、加齢とともに仕事がなくなり、どこの店からも断られます。パソコンも使えず、情報弱者である彼女は「体を売りたくても売れない」という極度の貧困状態に陥っています。

この対比からわかるのは、誰もが体を売って簡単に稼げるわけではなく、むしろ多くの女性が買い叩かれ、生活保護以下の収入しか得られていないという厳しい現実です。

これは「社会の問題」である

著者は、この問題は個人の選択や責任だけでは片付けられないと指摘します。非正規雇用の蔓延による世帯収入の減少が、多くの女性を売春へと向かわせている。そして、志願者が増えることで価格競争が起こり、売春の価値は下落し続けています。

つまり、女性たちが体を売らざるを得ない状況を作り出しているのは、私たち全員が生きるこの社会そのものなのです。

この本は、決して気分の良い読書体験ではないかもしれません。しかし、目を背けたくなるような現実の向こうに、私たちが向き合うべき社会の課題が見えてきます。社会の一員として、今の日本で何が起きているのかを知るために、ぜひ手に取ってほしい一冊です。

この本を読んでみたくなりましたか?

気になった方は、ぜひ実際に手に取って読んでみてください。

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